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議決権割合を種類株式で変更し評価減も、 事業承継の選択肢に
親族内に後継者のいない経営者にとって、後継方法の順路としては、まずは片腕となって働いてきた信頼できる部下に引き継いでもらいたいと思うかもしれません。ただし安定的な経営権の確保には過半数の株式保有が必要になり、株式の買取りを考えたときに、買取り資金の問題が浮上し、ことは簡単に進まなくなります。
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例えば、現社長が200株、社長の娘さんが150株、後継者候補が100株、自社株30株、計480株の状況とします。保有割合としては社長一族が約73%、後継候補が約21%。社長と後継候補は親族関係なし、今後も親族関係になる予定はありません。娘さんは経営には一切タッチしていません。
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ここで種類株式を導入し、社長一族の株式を無議決権株式に変更し、後継候補の議決権割合を50%超にし、なおかつ社長の株式評価を配当還元方式にして娘さんに相続できるかどうか考えてみます。
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無議決権株式については、平成19年3月9日付国税庁資産評価企画官情報において、「同族株主(原則的評価方式が適用される同族株主等をいう。)が無議決権株式を相続又は遺贈により取得した場合には、議決権の有無を考慮せずに評価する」と説明していますので、
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同族株主以外のグループに属する者が相続又は遺贈により取得した無議決権株式は、そのグループに適用される評価方法である配当還元方式によって評価するものと考えます。
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したがって、社長が保有する200株及び社長の娘さんが保有する150株の合計350株のうち260株を無議決権株式とした場合、総議決権数は社長グループ90株(約47%)と後継候補100株(約53%)の190株となります。
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この結果、後継者が同族株主、社長グループは少数株主となり、この種類株式への変換後の社長グループの保有する株式の評価額は配当還元方式によることになりますので、変換以後社長グループ内の株主間での相続又は贈与による株式の取得があった場合は、その株式の評価額は配当還元方式になると考えられます。
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一方、後継候補者については、従来の議決権割合は約23%で他の株主に50%超のグループがいるため少数株主でしたが、上記社長グループの保有株式の種類株式への変換によって議決権割合が変動することで、後継者の議決権割合は約53%となって同族株主となり、その保有する株式の評価額は原則的評価額によることとなるでしょう。
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このように、株式の所有状況に変更はないのに、種類株式を導入し議決権割合を変更することで、評価額を変える手法も場合によって検討出来ます。
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ただし、後継者が保有する株式の評価額は、社長グループの保有株式の種類株式への返還前と変換後において差額が生じることになり、この差額は、社長グループの行為によって生じた後継者への経済的利益であり、この経済的利益に対しては、みなし贈与課税が発生する可能性が高くなります。
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