一般社団法人 日本中小企業経営支援専門家協会(JPBM)では、会員専門家どうしの相互支援体制を構築し、質の高い専門家実務の提供を目指しています。ここでは、会員の疑問に高度な知見を持つ専門家が答えるFAX相談より1例をご紹介いたします。類似の事例に直面したとき、又は予防策としてご参考にしてください。
相談
『従業員レクリエーション旅行についての税務上の取り扱いについて』
法人Aは従業員の福利厚生の一環として、慰安旅行を企画しております。社員個々人の勤務日程等の関係から、慰安旅行については社員個々人が都合の良い日程で好きな場所に旅行してもらおうと考えています(会社として行先、日程は決めていません)。個々の都合に合わせて旅行するため会社員が旅行できるようになっております。
またその際、従業員のみならず従業員の家族も同行可能とし、その家族分も会社で負担しようと考えております。
旅行期間は4泊5日以内(海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内)とし参加割合は100%、一人あたり(家族分についても一律)の旅費10万円以内とした場合における取扱いについて旅行費用全額を福利厚生費として取り扱うことは可能でしょうか。もしくは、従業員分については福利厚生費、家族分については交際費として取り扱うことは可能でしょうか。
回答(1)
当該レクリエーション旅行の費用全額について、給与として取り扱うのが妥当と考えられます。
慰安旅行の税務的な取り扱いについて、旅行期間4泊5日以内、参加割合50%以上であれば、福利厚生費として取り扱う胸が国税庁でもあげられておりますが、こちらは全体参加の旅行に関してのもので、本件のように個人毎の都合に合わせて、家族を同伴させて旅行をする場合は、実質的に個人的な家族旅行と何ら変わらず、レクリエーションの本来的な目的である、従業員の親睦を深め、士気を高めるという使用者の必要に基づくものとはいえず、所得税基本通達36-30の課税しない経済的利益に該当しないため、給与として取り扱うのが妥当と考えられます。
回答(2)
法人Aが企画している慰安旅行が個別通達(昭63直法6-9・直所3-13)に該当するか否かの検討
1 経済的利益
現物給与(給与取得者(従業員)が使用人たる地位に基づいて使用者(法人)から金銭以外の物又は権利その他経済的利益で支給を受けるもの)は、本来の給与の代替又は追加的性質のもので給与所得として課税の対象となる。
その反面、現物給与は金銭に比べ選択性が乏しく、また換金性も不自由であり、さらに使用人に対する福利厚生面との関係から、税法、通達を通じて課税対象外とされているものが多い。
2 使用者が負担する各種レクリエーション費用
給与取得者は、会社の福利厚生施設等を通じて受ける「経済的利益」は各人に対する帰属、その程度が明確でない場合が少なくなく課税所得として捉えていない。
使用者が負担する各種レクリエーション費用も所得通達(36-30)で同様な趣旨から課税除外の取扱がなされている。
3 個別通達(昭63直法6-9・直所3-13)
使用者が旅行の費用を負担することにより従業員等が受ける経済的利益についてその取扱いを示したもので、「当該旅行の企画立案、主催者…総合的に勘案して実態に即した処理」としており、会社が計画立案し実行しなければ総合的判断は不可能である。
4 結論
A法人が主催した慰安旅行には該当せず、負担した金銭は家族分も含めて従業員の給与取得となる。
※内容はあくまで限定された情報に対する参考見解となります。税務、会計、法務およびその他の専門的なアドバイスを行うものではありません。具体的なアドバイスが必要な場合は、個別に専門家へご相談ください。