一般社団法人 日本中小企業経営支援専門家協会(JPBM)では、会員専門家どうしの相互支援体制を構築し、質の高い専門家実務の提供を目指しています。ここでは、会員の疑問に高度な知見を持つ専門家が答えるFAX相談より1例をご紹介いたします。類似の事例に直面したとき、又は予防策としてご参考にしてください。
相談
『賃借した土地の土の入れ替え費用について』
A社は農機具の販売修理を営む会社です。
A社は農機具の実演をするために土地を賃借しましたが、その土地は石などが多く含まれているために農機具の実演をすることができません。
そこでA社は、賃借した土地のうち、農機具の実演部分に係る土を取り除き、実演に適した土を埋め戻しました。賃借した土地についてA社で田んぼを作ったことになりますが、この土地では稲等を植えて育てる予定はなく、農機具の実演をすることを目的としています。
この場合、賃借した土地の効能を高めていることから借地権計上とも考えられますが、広告宣伝を目的とした支出であることから、費用あるいは繰延資産として計上することはできないでしょうか。
回答
賃借した土地の土の入れ換え費用の税務上の考え方
1.借地権の範囲
法人税法における借地権等の設定行為には、何ら施設を設けないで物品置場などとして土地を更地のまま使用させる行為も含まれます(法令137)。
さらに、賃借した土地の改良のためにした地盛り等も借地権の取得価額に含めることになっています(基通7-3-8)。
本件の場合は、事業の用(農機具の実演)に供するために適した土に入れ替えた行為は借主のA社が土地の有効活用を目的として行ったもので、A社の事業用資産(借地権)に資本的支出を行ったと考えざるを得ません。
この場合、借地権の取得価額に算入した土の入れ換え費用は、借地権を返還した事業年度の単純損金となります。
2.繰延資産となるか
法人税法では、法人が支出した費用のうち、支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものとなっていますが、資産の取得に要した費用は除かれています。
3. 広告宣伝費等支出時の費用となるか
土の入れ換え費用は、農機具の宣伝を実行可能にするためのもので上記1のとおり資産(借地権)の取得価額になり、直接不特定多数の者の宣伝効果を意図した費用には該当しません。
※内容はあくまで限定された情報に対する参考見解となります。税務、会計、法務およびその他の専門的なアドバイスを行うものではありません。具体的なアドバイスが必要な場合は、個別に専門家へご相談ください。
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