一般社団法人 日本中小企業経営支援専門家協会(JPBM)では、会員専門家どうしの相互支援体制を構築し、質の高い専門家実務の提供を目指しています。ここでは、会員の疑問に高度な知見を持つ専門家が答えるFAX相談より1例をご紹介いたします。類似の事例に直面したとき、又は予防策としてご参考にしてください。
相談
『定年退職前の退職金支給の取扱いについて』
A社は約10年前に退職給与規程の改正を行いましたが【引当方式→毎期精算方式(賞与扱い)】、旧規程の引当部分(全員支給額確定済)の支給は、「定年退職時」と規定しております。この度、定年の規定を62歳から63歳に引き上げたため、引当部分の支給も63歳にする予定ですが、今後従前の62歳での支給希望者がいれば定年前ですが支給しようと考えております。
この場合、定年前に支給する引当部分は退職金として取り扱ってよろしいでしょうか。それとも賞与扱いとなりますでしょうか。ご教示いただければと存じます。
回答
1 退職給与規程の改正により定年を延長した場合、旧退職金を定年退職前に支給する給与等については、次に要件のすべてに該当するものは退職手当等とすることとしています(所基達30-2(5))。
①旧定年に達する前の勤務期間に係る退職手当として支払われる給与。
②その支払いをすることにつき相当の理由があると認められること。
③その後支払われる退職手当等の計算上①の勤続期間を一切加味しないこと。
2 ②の「相当の理由」の内容
明確な規定は示していませんが、国税庁の「文書回答事例」では、具体的な事例が示されています。
すなわち、従業員は旧定年退職一時金の支給を前提に生活設計をしており、支給が改定後支給時に延期になると不都合が生じ、不利益になります(平成30.3.6高松国税局・平成31.1.10熊本国税局)。
3 本件の事実関係と判定
約10年前の退職給与規程の改定時の引当部分のみが定年退職時の退職手当となるので上記1①及び③の要件は満たしていると認められます。
従前の定年退職時に支給する理由(支給する相当の理由)が不明ですが、上記2②の具体例を参考に判断することになると思われます。
なお、希望者のみ1年前に支給するという事例は上記2②には示されていませんが、この事実だけで賞与扱いになるとは考えにくいです。
※内容はあくまで限定された情報に対する参考見解となります。税務、会計、法務およびその他の専門的なアドバイスを行うものではありません。具体的なアドバイスが必要な場合は、個別に専門家へご相談ください。
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