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ソコが知りたい(74)『個人事業主の専従者の退職金について』

一般社団法人JPBM(日本中小企業経営支援専門家協会)では、会員専門家どうしの相互支援体制を構築し、質の高い専門家実務の提供を目指しています。ここでは、会員の疑問に高度な知見を持つ専門家が答える事例相談より1例をご紹介いたします。類似の事例に直面したとき、又は予防策としてご参考にしてください。

相談

『個人事業主の専従者の退職金について』

幼稚園経営を行っている個人事業主Aは教諭として働いている妻Bに対し専従者として給与を毎月支給しています(教育用財産に対する相続税の非課税制度の適用の為、親族等の適正限度内で支給しております)。また、専従者、親族及び従業員は私立幼稚園退職基金財団に加入し、毎月掛金を支払っており、必要経費として算入しております。
この度、妻Bが満65歳になったことで、財団より「みなし定年者」として退職手当資金2300万円が幼稚園口座に入金されてしまいました(財団の制度として、本人の意思に関わらず、満65歳になった時点で退職手当金資金として入金されてしまうようです)。
個人事業主が青色専従者へ退職金を支払った場合、必要経費として認められないようですが、退職手当資金の入金時において個人事業主Aの収益として計上すべきでしょうか?
それとも、預り金勘定等で処理し、妻Bに送金した年において妻Bの所得として申告すべきでしょうか?(その際、妻Bの所得区分は雑収入になるのでしょうか? 一時所得になるのでしょうか)。
もし、妻Bの所得として申告する場合、送金するタイミングで所得区分が変わることはあるでしょうか(退職前に送金したら雑収入、退職時に送金したら一時所得、など)。
 

回答

1.お考えのように、事業専従者に支払った退職金は、必要経費として認められません。

2.青色事業専従者にも加入が認められる退職金制度として、次のものがあります。
①小規模企業退職金共済
青色事業専従者は「共同経営者」として、事業専従者個人が契約する形。したがって、掛金は青色事業専従者の所得控除を適用して専従者の所得税額を減らす形となります。個人事業主の必要経費とはなりません。
②中小企業退職金共済(中退金)
事業専従者は「従業員」で加入し、その掛金は専従者給与を支払う個人事業者の事業 所得の計算上必要経費になります。つまり、事業主の負担になります。ただし、専従者以外に常時雇用する従業員がいる場合はすべての従業員が加入することが前提となります。
㊟退職金を直接支払うと必要経費に認められないのに、中退金の掛け金が必要経費になることに疑問がないわけではないですが、他に従業員がいる場合に全ての「従業員」が加入(普遍加入)して平等に取り扱われ、「従業員」制が担保されていることが前提となります(そのまま引用しました)。

3.どちらの制度も、従来は事業専従者の加入が認められていませんでしたが、平成23年より加入できることなりました。どちらの制度も、受取時には、一時金の場合は退職所得(任意解約の場合は一時所得)、年金の場合は雑所得とされます。

4.幼稚園の場合には、上記のほかに各自治体が「退職金財団」を設立して、同様の業務を行っているようです。「退職金財団に関するF&Q(よくあるご質問)」公益財団法人 埼玉県私立幼稚園教職員退職金財団のものです。
①これによりますと、「退職金財団ヘの掛金は、給与の一部として幼稚園が支払います。教職員の方が負担するものではありません」とありますので、退職金掛金の形態としては、「中小企業退職金共済」に近いと考えられます。
②Q10:「みなし定年とはどういうことですか」の回答として、「・・・実際には退職していませんので、退職金の支給はありません。確定した退職金は、退職財団がお預かりしています。」
③「平成21年度からは、みなし定年に達した教職員の退職資金を年長者分から予算の範囲内で幼稚園に移管し幼稚園で管理をお願いしております。移管された退職金は、実際に退職したときに幼稚園から退職者に支給されます。退職前に当該教職員に支給した場合、一時所得として課税対象になり、多額の税金の支払が発生することになりますのでご注意ください」とあります。

5.これらのことからして、幼稚園の退職金財団は中退金の制度に類似していることから、税務上も中退金と同様に扱ってよいものと思います。幼稚園の退職金財団も公的な法人ですし、幼稚園で働く教職員の将来支払うことになる退職金への備えとして特別に事業主負担の掛け金を必要経費に認めるものです。更に、事業専従者であっても、他の従業員と同様に事業に従事している場合には従業員と同様に取り扱う(中退金の場合には平成23年からですが)ことにしたものと考えられます。

6.また、本来であれば「みなし定年」により確定した退職金は、年金財団が預かるものであるが、資金的に余裕がある年金財団にあってはその保管・管理を幼稚園に移管する、つまり預り金であると理解できます。

結論としては、専従者Aが実際に退職するときに退職金として支払うことを予定しているものであり、個人事業主においては「退職金財団からの預り金」として経理すべきものと考えます。実際の退職時支払では、退職所得として源泉所得税の課税対象になります。また、実際の退職前に支払うと、一時所得の課税対象になり、多額の所得税が発生することになります。

 

※内容はあくまで限定された情報に対する参考見解となります。税務、会計、法務およびその他の専門的なアドバイスを行うものではありません。具体的なアドバイスが必要な場合は、個別に専門家へご相談ください。

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