一般社団法人 日本中小企業経営支援専門家協会(JPBM)では、会員専門家どうしの相互支援体制を構築し、質の高い専門家実務の提供を目指しています。ここでは、会員の疑問に高度な知見を持つ専門家が答えるFAX相談より1例をご紹介いたします。類似の事例に直面したとき、又は予防策としてご参考にしてください。
相談
『100%子会社における定期同額給与の取扱いについて』
A社の100%子会社であるB社の各々の役員報酬の額については、B社の株主である親会社A社の代表取締役社長が決定しております。
役員報酬については、通常、株主総会で決議(または役員報酬の総額は株主総会、各々の役員報酬の額は取締役会で決議。以下「株主総会等」といいます。)されることで、決定します。
また、株主総会等については議事録も作成するため、その議事録は、決定した役員報酬の額の根拠書類になると思われます。
しかしB社の場合、役員報酬の額は株主総会等ではなく、A社の代表取締役社長からの‘‘一声(電話連絡)’’で決定するため、その決定金額について特に記録は残しておりません(A社側には決定金額の記録有り)。
この場合、上記の役員報酬について「定期同額給与」の要件を満たすものであれば、B社において損金算入が可能でしょうか?【ただし、上記のA社の代表取締役社長からの電話連絡の備忘録(決定金額を確認できる書類)は必要でしょうか?】
それとも、株主総会等の決議及びその記録である議事録を作成していなければ、損金算入は難しいでしょうか?
また、他に良い方策等ございましたらご教示いただければと存じます。
回答
1 役員給与の取扱い
法人税法上、役員給与は「定期同額給与」等一定の条件の基に支給される給与のみが損金の額に算入されることになっています。この場合の役員給与額の決定方法は、原則として、貴見のとおりです。
2 定期同額給与の決定方法
法人税法では、役員給与を損金の額に算入するためには、一定の期間、支給額が同額であることが条件で、その決定方法は定めていません。しかし、役員給与を支給する法人としては会社法等の規定に準じて支給金額を決定し、法人税法上の定期同額の条件を備えなければなりません。
3 本件の給与支給額の決定方法
B社の株主は株式100%所有のA社であり、その代表者の決定した金額がB社の役員給与の支給金額となっている事実から、株主総会等における決議と基本的には同様の効力があると考えられます。
B社は、各々の役員の支給金額をA社の代表者が決定した事実を書面にすることにより、一定期間の支給金額が決定されたことになると考えられます。
従って、その事実を明らかにする「備忘録」等の書類は必要としますが、「株主総会等の決議及び議事録」の作成は必要要件となっていません。
※内容はあくまで限定された情報に対する参考見解となります。税務、会計、法務およびその他の専門的なアドバイスを行うものではありません。具体的なアドバイスが必要な場合は、個別に専門家へご相談ください。
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