一般社団法人 日本中小企業経営支援専門家協会(JPBM)では、会員専門家どうしの相互支援体制を構築し、質の高い専門家実務の提供を目指しています。ここでは、会員の疑問に高度な知見を持つ専門家が答えるFAX相談より1例をご紹介いたします。類似の事例に直面したとき、又は予防策としてご参考にしてください。
相談
『従業員の退職金の取扱いについて』
A社は60歳定年制を採用しており、60歳を迎えた従業員は定年退職となりその際に社内の退職金規定に基づき計算した退職金を支給しております。また、これとは別に定年退職時に中退共掛金による退職金が中小機構から支給されます。
なお、希望者には再雇用を認めております。再雇用の条件は、定年退職時にそれまでの役職を解き最低賃金で契約社員として再雇用することとしております。なお、営業所長級以上等一定の役職者については、下記のいずれかを選択することができることとなっています。
①役職を解き最低賃金で契約社員となること
②正社員と同等の待遇で継続すること(原則5年間、それ以降は①と同じ)
※退職金支給条件
・上記①を選択した場合:定年退職時にその時に計算した退職金総額
・上記②を選択した場合:定年退職時にその時に計算した退職金総額の60%、正社員と同等の待遇の期間が終了する時に、残りの40%を支給
(①②ともに退職金規定に規定有り。また定年退職時にその内容を退職者本人に周知し、了解を得ております)
以上のことを踏まえて、
質問1
営業所長級以上等一定の役職者についてのみ、上記①と②を選択できること自体、税務上差し支え無いでしょうか。
質問2
上記②の「正社員と同等の待遇で継続すること」を選択した場合、この要件で、定年時に「退職」として取り扱って差し支え無いでしょうか。
もし、「退職」として取り扱うことができない場合、定年時に支給する60%部分は「賞与」と判断されてしまうのでしょうか。
また、この場合、どのようにしたら「退職」として取り扱うことができるでしょうか。
質問3
質問2において差し支えが無い場合、当該分割支給(定年退職時に60%支給、正社員同等待遇期間終了時に40%)は、いずれも退職金として取り扱って差し支え無いでしょうか。
良い方策等ございましたらご教示いただければと存じます。
回答
質問1について
税務上特に問題はないでしょう。
質問2・3について
「正社員と同等の待遇で継続すること」を選択した場合には、退職金総額の計算方法を除き、定年を延長し雇用関係は従前どおり継続するということでしょうから、60歳を迎えた時に支給する退職金総額の60%相当額は、退職金ではなく賞与として認定されるでしょう。
60歳を迎えた時に支給する退職金総額の60%相当額は、退職金ではなく貸付金として処理し、正社員期間満了時に退職金総額を退職金として支給する際に、貸付金と相殺するという方法により、賞与と認定されることを回避すべきでしょう。
※内容はあくまで限定された情報に対する参考見解となります。税務、会計、法務およびその他の専門的なアドバイスを行うものではありません。具体的なアドバイスが必要な場合は、個別に専門家へご相談ください。
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