一般社団法人 日本中小企業経営支援専門家協会(JPBM)では、会員専門家どうしの相互支援体制を構築し、質の高い専門家実務の提供を目指しています。ここでは、会員の疑問に高度な知見を持つ専門家が答える事例相談より1例をご紹介いたします。類似の事例に直面したとき、又は予防策としてご参考にしてください。
相談
『事業承継のコンサルティング費用について』
会社の事業承継の手続きがあり、その中の一つに株式の手続きがありました。
株主の一人が身体的・精神的理由で通常の判断ができない状態であるため、家族信託をすることで、この株式を他の株主が管理することになりました。
行政書士からの請求書の項目に「家族信託の組成・コンサルティング報酬(株式)」という記載があり、実際の内容は事業承継全般の相談・対応費用ですが、色々な選択肢の中で株式の家族信託が一番いいだろうということで項目の記載が「家族信託の組成・コンサルティング報酬(株式)」になったようです。
この場合、会社の費用として計上することができるのでしょうか。
回答
家族信託やコンサルティングの内容が詳しくわかりませんし、会社と株主個人がどの程度の便益を受けるのかの判断ができませんので、基本的な考え方をもって、それを参考に会社の経費に関する判断をしていただきたく存じます。
まず考えるべきは、事業承継に関して何らかの手当をしておくべきことが必要と考えたのが、会社か、株主かが問題になります。多分、会社における将来の株主対策の必要性から起こったのかと思います。とすれば、この費用の支出の必要性があったのは一義的に会社であったということになれば、会社経費の必要性が出てきます。
しかし、出来上がった形態が家族信託ということになると、株主が正常の状態で権利を行使できない状態において、受託者に株式の運用等を委託することなり、その限りでは便益を受けることになります。
結果としては、会社と株主の双方が便益を受けることになると思われますので、その便益の度合いを適正に見積もって、その割合で按分負担するのが合理的と考えます。
その結果、仮に便益の度合いが会社7に対して株主3と見積もられたとした場合、会社は支出費用の70%を負担することになります。
この会社負担の費用は、支出の効果がその後も継続しますので、繰延資産の「役務提供を受けるための費用」(法施行令14①六ハ)に該当すると考えられます。
その償却年数は、「ノウハウ頭金等」の5年を準用して、5年償却が適当かと考えます。
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