一般社団法人 日本中小企業経営支援専門家協会(JPBM)では、会員専門家どうしの相互支援体制を構築し、質の高い専門家実務の提供を目指しています。ここでは、会員の疑問に高度な知見を持つ専門家が答える事例相談より1例をご紹介いたします。類似の事例に直面したとき、又は予防策としてご参考にしてください。
相談
『附属設備等の評価及び課税時期前3年以内に取得等した家屋等の判定について』
非上場株式の評価の際の純資産価額の計算における課税時期前3年以内に取得した建物等についてお伺いさせていただきます。
評価対象会社が課税時期前3年以内に取得等をした建物等(建物及びその付属設備又は構築物)の価額は、原則として通常の取引価額により評価することとされていますが、次のケースは、この適用範囲の対象となりますでしょうか。
①古くから有していた集合住宅のシステムキッチンについて、課税時期前3年以内に入れ替え工事を行った場合。
②古くから有していた集合住宅の一室について、課税時期前3年以内に和室から洋室への変更工事を行った場合。
古い書籍になりますが、次の一文がございまして、今回のケースではどのように考えれば良いのかを悩んでおります。
「具体事例による財産評価の実務-相続税・贈与税Ⅱ」著者(笹岡宏保) 発行所(清文社)平成25年2月改訂版
<取得又は新築の範囲の例示>
土地又は建物等を、相続開始前3年以内に通常の売買や新築により取得した場合及びこれらに改良又は改造を加えた場合なお、「通常の取引価額」の対象とならない古くから有していた土地等又は建物等を改良又は改造した場合は含まれません。
回答
1 附属設備等の評価
附属設備等のうち、家屋の所有者が有する電気設備、ガス設備、給排水設備、温湿度調整設備等で、その家屋に取り付けられて、その家屋と構造上一体となっているものについては、その家屋の価額に含めて評価します(評基通92⑴)。
これらの附属設備等は、固定資産税の家屋の評価上「建築設備」として、その家屋の評価に算入されていることになっているためです(固定資産税評価基準)。
ご照会事例では、集合住宅のシステムキッチン及び内装工事がその集合住宅の固定資産税評価額に含まれるものであれば、企業会計上は附属設備等に区分したものでも純資産価額の計算では建物の価額に含めた評価として、「資産の部」の「帳簿価額」及び「相続税評価額」は横線等で表示します。
2 課税時期前3年以内に取得等した家屋等の判定
その附属設備等が家屋の評価額に含まれるもの以外のもので、その附属設備等に支出した金員が資本的支出に該当する場合は、その金員を支出した時に附属設備等を新たに取得したものと考えます。
したがって、その附属設備等の取得が課税時期前3年以内であれば、課税時期における通常の取引価額で評価する必要があります。
その支出が資本的支出に該当するか否かは、その附属設備等の維持管理、原状回復のための支出であれば修繕費であり、その資産価値を高め、あるいは耐久性を増すための支出であれば資本的支出として新たな附属設備等の取得に該当することになります(所基通37-10)。
資本的支出の具体例は次の通りです。
①建物の避難階段の取付け等物理的に付加した部分に係る金額
②用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した金額
③機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合、通常の取替費用に要する金額を超えた部分の金額
(注)建物の増築、構築物の拡張、延長等は建物等の取得に当たります。
※内容はあくまで限定された情報に対する参考見解となります。税務、会計、法務およびその他の専門的なアドバイスを行うものではありません。具体的なアドバイスが必要な場合は、個別に専門家へご相談ください。
※JPBMへの経営相談をご希望の方は、下記フォームよりお問合せください。