一般社団法人 日本中小企業経営支援専門家協会(JPBM)では、会員専門家どうしの相互支援体制を構築し、質の高い専門家実務の提供を目指しています。ここでは、会員の疑問に高度な知見を持つ専門家が答える事例相談より1例をご紹介いたします。類似の事例に直面したとき、又は予防策としてご参考にしてください。
相談
『匿名組合への出資金の評価について』
以下の事例についてご教授ください。
営業者 C社
組合員 A社
A社の出資額は1000万円
内国法人のA社(非上場)は、自社を組合員、C社を営業者とする匿名組合契約を締結し、C社の行う海上輸送用のコンテナのリース業に対して出資をしています。
A社の株式の評価にあたって、純資産価額方式をもってこの出資金の評価をおこなう必要があります。どのようにおこなうべきでしょうか。
※A社は、その匿名組合の事業により生じた損失を分担しない旨の定めはありません。
匿名組合員の価額は、課税時期において、その匿名組合契約は終了した場合に匿名組合員が分配を受けることができる精算金に相当する金額…と解釈した場合に、手許にある資料としては、
①毎期発行される事業年度
②課税時期で作成していただいた出資金の時価評価額
があります。
①を評価額とすると、債務超過となり、過去の国税不服審判所の事例を参照するとこれは適切ではない。
②を評価額とすると、この額をもって清算金を受け取れるかはまた別の話しとなるため、このまま使うには疑義があります。
しかし匿名組合における資産及び負債の構成からすると、①よりは合理的で実態と大きく剝離しているとは思えません。(課税時期時点の評価となっています)
上記以外に、合理的な説明のつく数字が得られなかったので、②を評価額として使っていたのですが、ここ数年で、コロナ禍による海上コンテナ価格の上昇と、円安の影響を受け、当初の想定以上に、出資金の時価評価額が大幅に増加しました。
そこで今更にはなりますが、この②を旬資産評価額の計算上、出資金の評価額として使用するのは適切でしょうか?
他に適切な評価方法がございましたら、アドバイスをいただければ幸いです。
回答
匿名組合員の有する財産は、利益配当請求権と匿名組合契約終了時における出資金返還請求権が一体となった債権的権利であり、その価額は営業者が匿名組合契約に基づき管理している全ての財産・債務を対象として、課税時期においてその匿名組合契約が終了したものとした場合に、匿名組合員が分配を受けることができる清算金の額に相当する金額により評価します。
清算金の額を算出するに当たっては、財産評価基本通達185(純資産価額)の定めを準用して評価しますが、匿名組合には法人税が課税されないことから、法人税相当額を控除することはできません(評基通185、商法535、536、538)。
なお、匿名組合員が出資した金銭等は営業者の財産に帰属することから、匿名組合員が匿名組合財産を損益の分配割合に応じて共有しているものとして評価することは相当ではないといわれています。
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