一般社団法人 日本中小企業経営支援専門家協会(JPBM)では、会員専門家どうしの相互支援体制を構築し、質の高い専門家実務の提供を目指しています。ここでは、会員の疑問に高度な知見を持つ専門家が答える事例相談より1例をご紹介いたします。類似の事例に直面したとき、又は予防策としてご参考にしてください。
相談
『借地権の無償返還と低額譲渡について』
1.借地権の無償返還
地代の支払がかなり遅れていた賃借人に対して賃貸借契約に基づいて、契約解除を申し立て、借地権が消滅した場合、「借地権に相当する価値がない」ケースとして課税されないという認識でよろしいでしょうか?※無償返還届出書は提出していません。
地代を解約した賃借人の残っている建物を取り壊す費用を大家さんが負担することを条件に、賃借人が借地権を放棄した場合、「借地権に相当する価値がない」ケースとして課税されないという認識でよろしいでしょうか?
回答
ご照会事例は、いずれも賃貸人及び賃借人の個人・法人の別、賃貸借契約の内容等が不明ですが、いずれも有償による借地権の取得(買戻し)に該当すると考えます。
したがって、一義的には法人税基本通達第13章に基づく借地権の時価と借地権の取引価格に差額があれば、譲受者(賃貸人)が法人であればその差額は受贈益の課税対象となり、譲渡者(賃借人)が法人であればその差額は寄附金課税の対象になるものと思われます。
この場合、譲渡者が個人であれば、所得税法第59条第1項に該当すればみなし譲渡が課税になります。
しかしながら、2事例とも、借地権の譲渡(返還)に至るまでの状況や当事者間の借地権の時価に関する認識等によっては、課税処理が異なる場合もあると考えます。
この事例は借地権の無償返還ではなく、受取地代の未収金額を借地権によって代物返済を受けているものです。
2.借地権の低額譲渡
賃貸借契約の内容が不明ですが、通常、借地上の建物の取壊し費用は賃借人が負担すべきものですので、賃借人は借地権を放棄したのではなく、建物の取壊し費用相当額で借地権を譲渡したことになります。一方、賃貸人は取壊し費用相当額で借地権を買取ったことになります。
当事者が個人であれば課税問題は発生しませんが、いずれかが法人の場合は、法人税法に基づく取扱いになると考えます。
※内容はあくまで限定された情報に対する参考見解となります。税務、会計、法務およびその他の専門的なアドバイスを行うものではありません。具体的なアドバイスが必要な場合は、個別に専門家へご相談ください。
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