一般社団法人 日本中小企業経営支援専門家協会(JPBM)では、会員専門家どうしの相互支援体制を構築し、質の高い専門家実務の提供を目指しています。ここでは、会員の疑問に高度な知見を持つ専門家が答える事例相談より1例をご紹介いたします。類似の事例に直面したとき、又は予防策としてご参考にしてください。
相談
『被相続人が意思能力を欠く場合の「生存給付金」の贈与の可否について』
①契約者が認知症により贈与の意思確認ができない場合でも、毎年の生存給付金は税務上の贈与(みなし贈与)として取り扱われ、相続開始前3年以内に相続人が受けた贈与部分を生前贈与として加算し、また、孫は相続により財産を取得していないため、加算の対象外となる。
回答
①の考え方によるべきと考えます。
2. お考えの通り贈与契約の成立には、贈与者の贈与意思と受贈者の受贈意思が必要とされているところですが、本件の場合、贈与者が意思能力を欠く状況になり意思表示ができない状態にあります。
しかし、保険契約に関して、生存給付金の受取人として、相続人と孫を指定し、その生存給付金は給付事由発生の都度、指定に従って相続人と孫の預金口座へ保険会社から振り込まれることになっています。この事実をもって、受取人の変更がなされない限り、被相続人の贈与の意思を強く推認することができます。
生存給付金の受取人として相続人と孫は指定されており、これは被相続人によって変更されない限り指定は有効と考えられます。更に被相続人の死亡によって、受取人の指定が変更される可能性はほぼなくなったと思われます。
これらの事実の前提に考えると、生存保険金が相続人と孫の預金口座へ振り込まれた都度、贈与があったものとして取扱うべきものと考えます。
例えば、贈与契約書で、「毎年12月に100万円ずつ10年間贈与する」とい内容の契約である場合には、毎年100万円ずつの贈与契約ではなく、契約時点で100万円を10年間給付するという権利を持つことから、初年において1000万円の贈与があったことになりますが、この生存給付金はそうではなく、暦年贈与に当たるということを言っていると考えます。
4. 税務の取扱いには「実質課税の原則」があります。形式ばかりにとらわれることなく、実質的に利益を享受している者に租税負担を求めるべきであるという考え方です。
本件を考えるに、1で述べたように、相続人及び孫は、実質的に利益を享受できる状態にあります。
また、仮に被相続人が契約から10年間生存した場合に、支払済みの生存給付金の全額を相続財産に取り込むことには無理があると考えます。
※内容はあくまで限定された情報に対する参考見解となります。税務、会計、法務およびその他の専門的なアドバイスを行うものではありません。具体的なアドバイスが必要な場合は、個別に専門家へご相談ください。
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