一般社団法人 日本中小企業経営支援専門家協会(JPBM)では、会員専門家どうしの相互支援体制を構築し、質の高い専門家実務の提供を目指しています。ここでは、会員の疑問に高度な知見を持つ専門家が答える事例相談より1例をご紹介いたします。類似の事例に直面したとき、又は予防策としてご参考にしてください。
相談
『デリバティブ取引に係る利益相当額又は損失相当額について』
クリック365は、売買価格の差額から生じる売買損益だけでなく、金利・配当相当額を受取ることが可能です。そのため、「取引残高報告書」上、未決済の建玉に関して、①評価損益相当額 ②金利・配当相当額がそれぞれ記載されています。
法人税の計算上、①評価損益相当額と、②金利・利益相当額の両方について、みなし決済損益額(法人税法61条の5第1項)として、益金又は損金として認識する必要があるという理解でよいでしょうか?
回答
1.デリバティブ取引が時価主義で会計処理される理由
・デリバティブ取引の特徴
①レバレジッド効果により損益が大きくなる可能性がある。
②差益決済のため、決済まで現金の受け渡しのない取引が多い。
・その結果、デリバティブ取引の時価が変動して多額の含み損が出ている場合でも現金の動きがないため、損失として計上されない。
・そのため、デリバティブ取引による時価をタイムリーに財務諸表に反映し、財務諸表利用者に適切な情報を提供する必要がある。ただし、一定要件を満たす場合には、例外的にヘッジ会計が認められる。
・こうした理由から、デリバティブ取引については時価主義による会計処理が強制されています。
2.法人税法上の扱いについては、法61条の5、第1項の通りです。
法人税基本通達は、2-1-35~2-1-38までです。
3.GMOクリック証券のネット記事に、個人の場合の扱いですが、「クリック365 取引 差益・スワップ益」はデリバティブ取引として確定申告が必要と記載されています。
4.取引の証券会社は、時価主義の基準を守って「取引残高報告書」を作成しているはずですから、決算期における損益金を、本決算において利益または損失として計上する会計処理が本筋と考えます。
5.申告調整として利益金額に加算又は減算して所得金額を算定し、翌期に反対仕訳をする方法もあるでしょうが、金額が少額である場合に限るべきでしょう。
※内容はあくまで限定された情報に対する参考見解となります。税務、会計、法務およびその他の専門的なアドバイスを行うものではありません。具体的なアドバイスが必要な場合は、個別に専門家へご相談ください。
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