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ソコが知りたい(16)『研究開発費について』

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一般社団法人 日本中小企業経営支援専門家協会(JPBM)では、会員専門家どうしの相互支援体制を構築し、質の高い専門家実務の提供を目指しています。ここでは、会員の疑問に高度な知見を持つ専門家が答えるFAX相談より1例をご紹介いたします。類似の事例に直面したとき、又は予防策としてご参考にしてください。

相談

『研究開発費について』

当社は親会社(100%、A国所在)からの委託を受け、工具(刃物)の研究開発を行うことを目的として設立された内国法人です。

【研究開発の内容】
当社が行う研究開発は親会社から委託された(特定のテーマが与えられた)工具(刃物)の研究開発であり、その成果(例えば、刃物の刃先の製造に使用する金属の配合等の技術、以下「技術」)は研究開発完了時に親会社へのみ譲渡されます(親会社以外へ譲渡することや当社で使用することはありません)。開発技術者は、当社の社員および外部顧問(資本関係のない内国法人)であり、親会社からの出向者等はありません。
譲渡価額については成果のレベルによって譲渡時に決定されますが、当社の研究開発コストを下回ることはありません(適正売価算定のために移転価格税制に関する事前確認制度等を利用することも考えています)。また、仮に研究開発が失敗に終わった場合であっても、そのコストは親会社が負担することになります。したがって当社は開発リスクを負いません。
当社の運営や研究開発に必要なランニングコストは親会社からの借入金により賄われ、成果物の譲渡対価によってその返済が行われます。
現在、複数のテーマの委託を受けていますが、研究開発のレベルは、既存の工具(刃物)の技術改良であり、技術等の新たな開発や著しい改良に当たるものではありません。また、この研究開発による特許権等の取得は予定していません。
当社から研究開発の成果(技術)を譲り受けた親会社は、その成果(技術)に基づいて工具(刃物)制作し、これを親会社の工場にある工作機械に取り付けて製品を製造することになります。この工具(刃物)を使用して製造することにより製品の精度が向上するため、親会社は売上拡大を図ることができます。

このとき、
1.収益の計上時期
2.支出する研究開発に係る経費の計上時期
3.これらに関連する事項
について、以下に示しました考え方、処理方法で良いかどうかお教えください。

【質問1.収益の計上時期】
当社の行う研究開発は、親会社から委託を受け、その成果(技術)は全て親会社へ譲渡することから、民法上の請負と考えてもよろしいでしょうか(但し、譲渡金額は請負時ではなく、譲渡時に決定されます)。
請負と考えることが正しいのであれば、収益の計上時期は、法基通2-1-5から、特定のテーマごとの研究開発完了の日と考えています。

【質問2.支出する研究開発に係る経費の計上時期】
一般的に研究開発に要する費用(試験研究費)は、期間費用として発生額を発生時に費用処理する方法があるようですが、当社の研究開発に要する経費は、原価性があると考えられることから、その経費は製造原価に算入し、収益費用対応の原則に基づいて費用を認識し、期末において研究開発が仕掛中であるテーマに関する経費は仕掛品として棚卸資産に計上(法基通5-1-4(2))しようと考えています。

【質問3.関連する事項について(1)】
上述しました通り、当社の運営や研究開発に必要なランニングコストは親会社からの借入金により賄われます。この海外親会社からの借入金がある場合について、過小資本税制や過大支払利子税制への注意が必要であることは承知しておりますが、これら税制以外で注意すべき点はありますでしょうか。

【質問4.関連する事項について(2)】
当社では費用と収益の計上時期について簡便な方法として、上記とは異なるコストプラス方式(毎月、全ての経費を一般管理費として計上(当期の損金)し、この経費総額の105%程度を売上として親会社へ請求(当期の収益)する)での費用収益の計上についての検討も行っています。この方法の根拠として、研究開発が失敗した場合であっても親会社は、そのコスト負担をすることから研究成果(結果)ではなく研究活動自体に対する報酬として売上計上をすることが出来るのではないか、と思われるためです。収益計上の原則からは難しいようにも感じられますが、この方式の採用は可能でしょうか。

回答

研究開発費の収益・費用計上の時期
1 当社の事業形態
(1)当社は工具(刃物)の研究開発を行うことを目的としており、その成果は研究開発完了時に親会社に引き渡す。
(2)当社における研究開発が失敗に終わった場合でも、そのコストは親会社が負担する。
つまり、当社の業務は委託業務(研究開発)を処理することであって、一定の結果を出すことが目的であっても、成果の結果だけで報酬を得る契約にはなっていません。
以上の事実関係から、当社が親会社と締結した契約は民法に規定する「請負」(民632)ではなく「委任」(民643)に該当すると認められます。

2 収益及び費用計上の時期
一般に、収益の計上基準は実現主義を原則としつつ、取引の形態に応じて発生主義、現金主義も認められています。
民法の「委任」における報酬の請求は、原則として受任者が委任者に対して受任した業務を履行した時であるが、期間によって定めた報酬はその期間を経過した後に請求することができることとなっている。(民648②、624②)。
本件の場合、研究開発(委託業務)の報酬の請求が、受任者(当社)と委託者(親会社)の間で期間を定めての請求することが可能であれば(検討しているとのこと)、その期間を経過した時に収益が実現したと認められます。

3 質問に対する回答。
【質問1.収益の計上時期】
上記1のとおり「請負」には該当しません。

【質問2.支出する研究開発に係る経費の計上時期】
貴見の通りです。

【質問3.関連する事項について(1)】
利率についても、「移転価格税制」について検討する必要があります。

【質問4.関連する事項について(2)】
当社の収益計上の時期は、上記2のとおり、原則貴見の方式で処理するべきと思われますが、役務の対価の報酬請求は文書等により明確にしておく必要があります。

※内容はあくまで限定された情報に対する参考見解となります。税務、会計、法務およびその他の専門的なアドバイスを行うものではありません。具体的なアドバイスが必要な場合は、個別に専門家へご相談ください。

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