一般社団法人 日本中小企業経営支援専門家協会(JPBM)では、会員専門家どうしの相互支援体制を構築し、質の高い専門家実務の提供を目指しています。ここでは、会員の疑問に高度な知見を持つ専門家が答える事例相談より1例をご紹介いたします。類似の事例に直面したとき、又は予防策としてご参考にしてください。
相談
『事業用の資産を買い換えたときの特例について』
個人:甲が所有する事業用の土地Aを2回に分けて売却する場合の買い換え特例についてのお尋ねです。
令和4年11月に土地Aの半分を売却して令和5年3月に面積が土地Aと同等な土地Bを取得して買い換え特例を受けて、さらに令和6年2月に土地Aの残り半分を売却して取得している土地Bを特例の対象とすることは可能なのでしょうか。
また、年を超えて買い換え特例が可能になるとすれば最初に売却した時期、買い換え資産を取得した時期、残り半分を売却する時期等に関して注意しなければならない事はどういうことがあるでしょうか。ご教示よろしくお願いいたします。
回答
ご照会事例では、第1回目の土地Aの譲渡(令和4年11月)については、土地Bを買換資産として事業用資産の買換えの特例(措法37①)を適用することができますが、第2回目の土地Aの譲渡(令和6年2月)については、土地Bを買換資産として事業用資産の買換えの特例を適用することはできません。
なお、第1回目の土地Aの譲渡について土地Bを買換資産とする場合は、買換資産の取得が土地Aを譲渡した年の翌年になることから、「買換(代替)資産の明細書」に土地Bに係る内容を記載して土地Aの譲渡所得を申告する確定申告書に添付する必要があります(措令25⑳)。
(注)ご照会事例では適用できませんが、買換資産を譲渡の年の前年に取得した場合(先行取得)は、先行取得した翌年の3月15日までに「先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出書」を所轄税務署へ提出する必要があります(措令25⑱)。
〔説明〕
1.買換資産の取得価額(引継価額)
事業用資産の買換えの特例の適用に当たって、譲渡資産の譲渡による収入金額が買換資産の取得価額に満たない場合は、その買換資産の取得価額に満たない金額は、その買換資産の取得価額に加算されて引き継ぐことになります(措法37の3①三)。
したがって、ご照会事例では第1回目の土地Aの譲渡で土地Bを買換資産とした場合、第1回目の土地Aの譲渡の収入金額を上回る土地Bの取価価額は、その土地Bの引継価額に加算されることになるので、第2回目の土地Aの譲渡に際しては、土地Bを買換資産にすることはできません。
(参考例)
譲渡資産の収入金額5,000万円
譲渡資産の取得費500万円
譲渡費用100万円
買換資産の取得価額10,000万円
〔買換資産の引継価額の計算〕
①(500万円+100万円)×80%=480万円(取得費及び譲渡費用のうち引継ぎ金額)
②5,000万円×20%=1,000万円(収入金額うち課税された金額)
③10,000万円-5,000万円=5,000万円(買換資産の取得価額に満たない金額)
引継ぎ価額;①+②+③=6,480万円
2.土地Bの取得後に分筆を行った場合
土地Bを取得した後2筆に分筆を行い、そのうちの1筆を土地Aの買換資産とした場合には、事業資産の買換えの特例を適用できるのではないかとの疑問が生じますが、措置法通達37-19(譲渡資産又は買換資産が2以上ある場合の買換え)では、その注書きにおいて「買換資産の一部のみを・・・買換資産として同項の規定を適用することはできない」と定めていることから、買換資産として取得した資産を、その取得後に分割する行為は認容されないと考えます。
(注)買換資産を取得する際に、当初から2筆以上の土地を一括で取得した場合において、そのうちの1筆を買換資産として特例の適用を行うことは可能であると考えます(措通37-19)。
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