一般社団法人 日本中小企業経営支援専門家協会(JPBM)では、会員専門家どうしの相互支援体制を構築し、質の高い専門家実務の提供を目指しています。ここでは、会員の疑問に高度な知見を持つ専門家が答える事例相談より1例をご紹介いたします。類似の事例に直面したとき、又は予防策としてご参考にしてください。
相談
『繰延資産の開業費の範囲等について』
2022.10設立の法人(パーソナルコーチング業務)で2021年10月~2022.9月の期間に、「○○式コーチング資格」取得のため、以下の支出をしています(約950万円)。
① セミナー受講費用 3回 500,000円
② セミナーイベント受講費用 3回 300,000
③ 認定コーチ資格取得費用 2回 6,500,000
④ 教材購入費用 2回 530,000
この資格は、弁護士資格のような独占業務ではなく、看板や名刺に箔をつけるためやサービス技術等向上のために取得した資格です。これらの支出を開業費として計上する、ないしは1期目の費用として処理することは可能でしょうか。
回答
①「パーソナルコーチング業務」を次のように理解します。
「一般社員・一般の方を対象にした、仕事・人生・生き方・家族・プライベートの様々な問題をテーマとして扱い、対話を通して、コーチがクライアントから答えを導き出す手法」をいう。
②設立前の期間の支出の取扱いですが、原則は「人格のない社団等」の損益として法人税の申告をすべきものですが、お考えのように、設立第1期の損益に含めて申告をすることができる(法基通2-6-2)とされていますので、設立第1期の損益に含めるのがベターと考えます(欠損金の繰越等を考えると)。
③繰延資産の「創立費」は、会社設立のための費用ですから、これには当たりません。「開業費」は、設立から事業開始までの支出で、開業準備のために「特別」に支出した費用とされています。これに該当しないものとして、経常的な支出(利子、給与、借料、水道光熱費など)が挙げられています。
・開業費の例として「営業開始に関わる研修費用」がありますが、開業のために受けるセミナー受講費用はこれに当たると考えます。ご質問の支出もこれに該当すると考えます。
・③の支出が突出しており、資格取得にこれほどの支出が必要なのか疑問を持ちます。
どのような内容で、どのようなアフターケアを含んでいるのかを確認して、支出の効果が及ぶ期間を確かめ、必要に応じて「繰延資産」に計上するなどが必要と思われます。
④支出は、③の支出を除き、いずれも「開業費」としての繰延資産の内容と認められます。 繰延資産に該当すれば、税務上は「任意の金額」を償却して損金算入ができます。
仮に繰延資産に該当しないとすれば、これらの費用を次年度以降に繰り越す理由はありませんので、第1期の費用とすることになります。
・どちらをとっても、設立第1期の損金算入が可能と考えます。
なお、法人の詳しいことを確認せずに回答していることをお含みおきください。
※内容はあくまで限定された情報に対する参考見解となります。税務、会計、法務およびその他の専門的なアドバイスを行うものではありません。具体的なアドバイスが必要な場合は、個別に専門家へご相談ください。
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