一般社団法人 日本中小企業経営支援専門家協会(JPBM)では、会員専門家どうしの相互支援体制を構築し、質の高い専門家実務の提供を目指しています。ここでは、会員の疑問に高度な知見を持つ専門家が答える事例相談より1例をご紹介いたします。類似の事例に直面したとき、又は予防策としてご参考にしてください。
相談
『増築部分に係る敷地が特定居住用宅地等として適用対象になるか否かについて』
状況概要
・従前、地積200㎡の宅地等の上に、被相続人所有の2F建家屋(以下「既存建物」という)が敷地のうち100㎡部分に建っており、相続開始直前まで被相続人の居住の用に供されていた。
・一定の時点(30年以上前)で、残敷地100㎡部分に2F建家屋を増築し、当該増築部分は増築時から相続開始まで被相続人の長男の居住の用に供されている(いわゆる2世帯住宅)。
・この既存建物と増築部分は、一見2棟の建物のように見えるが、相互の1Fにおいて1部屋を媒介につながっており、自由に行き来が可能である。
・ただし、当該増築部分は登記されておらず、全部事項証明書には既存建物部分しか記載はない。
・なお、固定資産税課税明細書には当該増築部分の記載があり、既存建物を含めた1棟の家屋として毎年課税されている。
上記の状況において、地積200㎡すべてが特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例の適用することが可能でしょうか。なお、増築部分に居住していた長男が当該宅地等を取得し、相続税の申告期限まで引き続き居住及び保有をするものとし、当該長男は被相続人と生計は別とします。
私見としましては増築部分については、登記事項証明書の記載はないものの、固定資産税課税明細書では1棟の家屋として判断することができるので、地積200㎡すべてを特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例適用が可能と考えております。
ただ、「登記事項証明書に記載がない」「固定資産税課税明細書では1棟の家屋と読み取れる」ことをもって増築部分が区分登記されていない既存建物と一体の1棟の建物と判断してしまってよいのか疑問が残っております。
例えば、申告期限までに当該増築部分を既存建物と併せて1棟の建物として登記すること等が必要なのかどうか、思案しています。
適用可否及びその理由のみならず、私の考えに足りていない部分がありましたらご指摘いただけると助かります。
回答
ご照会事例の既存建物及び増築部分の建物は、被相続人が居住の用に供していた1棟の建物に該当するので、被相続人が居住の用に供していた部分及び生計を別にする長男が居住の用に供していた部分を含めて、その敷地である宅地200㎡について小規模宅地等の特例が適用できると考えます(措法69の4③二、措令40の2④かっこ書)。
ご照会事例では、増築部分の建物が未登記となっているようですが、既存建物と増築部分の建物が構造上、別棟としての登記あるいは区分登記によらざるを得ない建物でない限り、固定資産税の課税上の評価を参考として1棟の建物として取り扱うべきと考えます。
相続開始後その申告期限までに増築部分の建物を登記するか否かで、課税時期における事実認定が変わるものではありませんが、じ後において既存建物と増築部分の建物を1棟の建物として登記した事実があれば、相続前と相続後の状況が同一であるという補完説明になると考えます。
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