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ソコが知りたい(58)『融資を個人で受けた際の相続税非課税制度の適用について』

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一般社団法人 日本中小企業経営支援専門家協会(JPBM)では、会員専門家どうしの相互支援体制を構築し、質の高い専門家実務の提供を目指しています。ここでは、会員の疑問に高度な知見を持つ専門家が答える事例相談より1例をご紹介いたします。類似の事例に直面したとき、又は予防策としてご参考にしてください。

相談

『融資を個人で受けた際の相続税非課税制度の適用について』

幼稚園事業と不動産事業を行っている個人事業主(園長)がこの度、新たに園舎(土地含む)を建設すべく1億円の融資を受ける予定です。
この個人事業主は所得税青色申告承認申請書を提出しており、毎年所得税確定申告の時に「相続税法施行規則附則第6項の規定による幼稚園等教育用財産の現況届出書(以降Aとする)」及び「相続税法施行規則附則第8項、第12項の規定による家事充当金の限度額の認定(変更)届出書(以降Bとする)」「財産債務調書(Cとする)」を提出しております。そして、その家事充当金限度額(年額)を超えない範囲で幼稚園の口座から個人口座へ送金を行っております。

質問①
園舎を幼稚園等教育用財産とし、借入金1億円は幼稚園ではなく個人の債務とすることはできますか?(融資は個人名で受けることにより、園舎は相続税非課税制度を受け、借入金は相続時の債務とすることが可能でしょうか?)

質問②
仮に上記①が可能として個人の債務とした場合、返済を幼稚園の資金で充ててもリスクは生じないでしょうか?※上記家事充当金とは別で、返済を幼稚園の資金で充てようと思案しているのですが、返済資金も家事充当金となり限度額を超えることで相続税の非課税の特例が受けられなくなる等のリスクが生じないでしょうか?

質問③
上記②の別パターンとして、返済は全て個人の資金で行った場合にリスクは生じないでしょうか?(偏在に関して幼稚園は関与しない場合、相続税の非課税の特例が受けられなくなる等のリスクが生じないか?)
 

回答

(1)質問①
ご照会事例の「個人事業主(園長)」(以下「現園長」といいます。)は、現園長の親族である先代園長(以下「旧園長」といいます。)から相続又は遺贈(以下「相続等」といいます。)より、個人立幼稚園の事業の用に供している財産を取得し、その相続税の申告に当たって、その財産を非課税財産として届出を行っているもの判断されます。
今回、「新たに園舎(土地含む)」(以下「新園舎」といいます。)を建設するとのことですが、これは上記の旧園長からの相続等で非課税財産として届出したものではなく、現園長が新たに取得する財産ですから、その建設に伴う資産及び負債は現園長の個人財産に帰属するものです。
したがって現園長に相続が開始した時は、新園舎は被相続人である現園長の相続財産であり、その債務の残額は現園長の相続税の債務になります。
その際に、新園舎が相続税の非課税財産に該当するか否かは、従来からの園舎と併せて新園舎を相続等した者(以下「新園長」といいます。)が、上記の要件に該当するかによって判定することになります。なお、新園舎が非課税財産に該当した場合は、その新園舎に係る債務は債務控除の対象になりません(相法13③)。

(2)質問②
個人立幼稚園の資産については、その事業のための支出以外の支出に充てることは禁止されています(相規附則7六)が、新園舎の建設は、その幼稚園の事業拡張等のために行われるものであり、その建設に係る借入金の返済は、その幼稚園の事業のための支出であると考えます。
また、家事充当金は、事業経営者に対する給与等に代えて支払われるものですから、上記借入金の返済金額が家事充当金に加算されることはないと考えます。

(3)質問③
イ 不動産所得から返済した場合
新園舎に係る借入金の返済を現園長の不動産所得から行い、その返済が現園長の相続開始の年の5年前から相続開始の年まで継続した場合、幼稚園事業と不動産事業の経理処理が明確に区分されていないことになり、新園長は、相続税の非課税財産の特例を適用できなくなる可能性があります(相規附則7五)。
(注)新園舎に係る借入金の返済は、不動産所得とは別の事業の経済取引であることから、その支払利息等は不動産所得の必要経費に該当しないと考えます。

ロ 個人の蓄積等から返済した場合
新園舎に係る借入金の返済を現園長の資産である預貯金等から行った場合、現園長の相続に際して、新園舎が非課税財産と認められる可能性は高いと考えられますが、新園舎に係る借入金に残額がある場合、会計処理上は関連がないとしても、新園舎に係る債務であるという事実に変わりないことから、その債務の残額は債務控除に該当しないのではないかと考えます。

※内容はあくまで限定された情報に対する参考見解となります。税務、会計、法務およびその他の専門的なアドバイスを行うものではありません。具体的なアドバイスが必要な場合は、個別に専門家へご相談ください。

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