一般社団法人 日本中小企業経営支援専門家協会(JPBM)では、会員専門家どうしの相互支援体制を構築し、質の高い専門家実務の提供を目指しています。ここでは、会員の疑問に高度な知見を持つ専門家が答える事例相談より1例をご紹介いたします。類似の事例に直面したとき、又は予防策としてご参考にしてください。
相談
『適格分割に該当し、帳簿価額で資産負債を移転できるかについて』
株株式移転により親会社を設立後、子会社の不動産賃貸事業に関する資産・負債を親会社に吸収合併する場合
①(株)A社:不動産賃貸業事業 資産5億円 負債2億円 純資産3億円
卸売事業 資産4億円 負債3億円 純資産10億円
②(株)B社を設立 A社の株式出資によるので親会社となる。
A社株式4億円 資本金1000万円 資本剰余金3億9000万円
③B社が、A社の不動産賃貸事業を吸収分割(無対価)する、
以上の処理をした場合、A社からB社に資産及び負債を帳簿価額で移転することに問題はないでしょうか?
回答
1.A社とB社は「完全支配関係」にありますので、適格合併に当たることに問題はないと思われます。
2.適格分社型分割による場合の試算及び負債の価額については、法人税法62の3及び同施行令109条1項七号により、取得価額は直前の移転資産及び移転負債の帳簿価額とされています。
3.親会社の一部を設立子会社に移転するのが一般的でしょうが、ご質問の事例ではこの逆の形となっています。税法の条文を読んだ限りでは、分割承継法人とあるだけで、親会社・子会社の表現はありません。
また、施行令109条1項七号では「分割承継親法人」という表現を用いていますので、子会社から親会社への事業移転も想定していると思われます。
4.完全支配関係にある法人間の資産移転ですから、要件は、完全支配関係とその継続、株式以外の対価がないこと、帳簿価額による引継でしょう。
以上のほかに問題になる点がないとした場合、税務上問題はないと考えます。
※内容はあくまで限定された情報に対する参考見解となります。税務、会計、法務およびその他の専門的なアドバイスを行うものではありません。具体的なアドバイスが必要な場合は、個別に専門家へご相談ください。
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