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ソコが知りたい(32)『保守工事料の収益計上の時期について』

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一般社団法人 日本中小企業経営支援専門家協会(JPBM)では、会員専門家どうしの相互支援体制を構築し、質の高い専門家実務の提供を目指しています。ここでは、会員の疑問に高度な知見を持つ専門家が答えるFAX相談より1例をご紹介いたします。類似の事例に直面したとき、又は予防策としてご参考にしてください。

相談

『保守工事料の収益計上の時期について』

電機工事業を営む法人A社(決算月8月)において、この度B市の街灯の取付工事をリース会社Cより受注し、この度完工となりました。
街灯については、B市においてC社よりのリース資産となります。
A社のC社との工事請負契約書には、請負工事金額XXXX万円。工事金額には「当社より向こう10年間の保守工事料を含む」と明記されています。
A社とB市との保守契約も締結しましたが、保守工事料についての記載はありません。
A社は今後10年間、保守工事の責を負うことになりますが、当工事の工事代金、以降の保守工事料の算出と収益の計上時期について、税務処理はどのようになりますでしょうか。以下の質問についてご教示の程よろしくお願い申し上げます。

【質問1】
工事代金については、通常の見積方法及び実際の工事原価から算出し、契約工事金額から差引。
残額を保守料10年分として按分。1/10を当期の収益として計上したいと思いますが、これでよろしいでしょうか。
保守工事料としては、経年により初年度と最終年度では実際額は大きく異なると思われますが、算出することは困難と思われます。

【質問2】
前受になると思われる保守工事料の消費税については、今後税率改定があっても、以降年度毎8%での収益計上を確認させて頂ければと思います。

回答

1 事例のポイント
(1)A社はB市から街灯の取付工事を請負い、当期完了し引き渡した。
(2)請負契約金額には、向こう10年間の保守工事が含まれているが、保守工事代金は取付工事代金と区分されていない。
(3)A社は、①取付工事代金は、実際の工事原価等から算出し、請負契約金額から控除した金額を保守工事代金として②10年間按分して収益に計上する。
上記事実関係から、収益計上の時期を検討します。

2 収益の額に算入すべき金額
法人税法上、益金の額に算入すべき金額は、別段の定めのあるものを除いて資本等取引以外の取引にかかる当該事業年度の収益の額であるとし、収益の額の生ずべき取引を例示しています(法22②)。
そして、その収益の額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されていることを前提としています(法22④)。

3 収益計上の時期
法人税法上(通達を含めて)継続的な役務提供契約に係る収益計上の時期を直接定めた規定はありません

他の収益計上の時期の規定についてみると「請負による収益の帰属の時期」(基通2-1-5)では、役務の提供については、その役務の完了した日の属する事業年度の益金とすることが原則となっていると考えられます。
その具体的な取扱いとして「技術役務の提供に係る報酬の帰属時期」(基通2-1-12)では、①役務の提供について、報酬の額が作業の段階ごとに区分され、かつ、それぞれの段階の作業が完了する都度その金額を確定させて支払をうけることになっている場合は、その確定した日の属する事業年度の益金の額に算入することになっています。
②後日清算する必要のないもの(いわゆる確定収入)であれば、その収受した日の属する事業年度の益金の額に算入することとされています。
このような、確定収入についての取扱いについては「保守金等のうち返還しないものの額の帰属の時期」(基通2-1-41)においても、それが返還しないことが確定した日の属する事業年度の益金の額として取り扱われることになっています。

4 事例の検討。
【質問1】
(1)1①の税務処理
一の契約において、作業が区分されてそれぞれ金額が確定している場合は、その金額を基準として個別に収益に計上することが認められている取扱いはあります(上記3①)。
事例ではA社が任意の基準により受領金額を区分していますが、その会計処理について別段の定めの規定はなく、また、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に該当するとは認められません。
従って、受注者は任意に請負契約金額を区分して別途の経理処理をすることはできないと認められます。
(2)1②の税務処理
上記(1)のとおり、1①の税務処理は否認されるため、請負契約金額として受領した金額総額がいわゆる確定収入となり、確定した日の属する事業年度の益金として取り扱われることになります。

(3)保守工事料
支出した費用は、確定した事業年度の損金となります。

(質問2)
前受金と処理する税務処理は否認されるので、当期の課税売上になります。

※内容はあくまで限定された情報に対する参考見解となります。税務、会計、法務およびその他の専門的なアドバイスを行うものではありません。具体的なアドバイスが必要な場合は、個別に専門家へご相談ください。

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